アレン・ハウザー/ノー・サンバ/ボンバ・レコード
(1)メキシコ
(2)シャーロッツヴィル
(3)ノー・サンバ
(4)カズン・レイズ・スリー・ステップ
(5)テン・イヤーズ・アフター
アレン・ハウザー(tp)
バック・ヒル(ts)
ヴィンス・ジェノヴァ(pf)
テリー・プルメリ(b)
マイク・スミス(ds)
夏が来れば思い出す。尾瀬ではない。北海道のくっちゃんジャス・フェスティバルの1996年のステージ。小樽のアマチュアバンドがアンコールに「ノー・サンバ」をやった。わたしはこの時まで「ノー・サンバ」なる曲を知らなかった。近くに座っていたその道の方に伺うと、ジャズ喫茶では結構、人気のある曲とのことだった。どろどろしたアウト風のアンサンブルからドラムがバタバタと抜け出す。そうすると、ほとんど同じトーンでテナーとペットが単刀直入にメロディーを吹く。その瞬間の何と言うか勇壮なところがいい。サンバのリズムに乗ってテキサス・テナーのヒルがバリバリ吹きまくる。ちょっと線が細いがハウザーもがんばる。
このアルバムはもうほとんどこの曲のためにあると言っても良い。73年録音。明るい録音も、いかにも70年代と言う感じで良い。
個人的主観による星の数(5つ星で満点、☆は0、5点)。
★★★☆
速報:マイケル・ブレッカーの病状
マイケル・ブレッカーの病状について少し前に書きました。
http://ameblo.jp/jazzclub/entry-10002567152.html
マイケル・ブレッカーの事務所のすぐに問い合わせとお見舞いのメールを送ったのですが、一時間ほど前にマイケルの関係者からお返事をいただきました。漢字を使える環境ではないようで、ローマ字のものでした。 下記のとおり漢字に置き換えます。
「今、ニュー・ヨークにいます。昨晩、ミュージック・プロデューサーで、ステップス・アヘッドと親しい方に、マイケルの話を伺いました。マイケルの奥様から、骨髄バンクの登録のドネーションのお願いメールが親しい方々に回っているようです。わたしのほうにも来ました。紹介させていただきます」とのこと。
akelakobaさんという方ですが、恐らく広告制作会社プロデューサーの方でジャズ・グル-ヴや楽器本の関係の仕事をしておられる方です。
一日も早い回復を願っています。
サム・イェイヘル/サーチン/NAXOS JAZZ
NAXOSはサイドメンを見て買うべし。このアルバムなどピーター・バーンスタインにジョー・ストラッサー、ライアン・カイザーにエリック・アレキサンダーと、メジャーレーベルでリーダー作を連発する人ばかり。きっとまだ無名の友人をプッシュするために結集したのだろう。本作のリーダー、サム・イェイヘル(オルガン)はピーターやエリックのアルバムでサイドメンを務める逸材。一曲目「サーチン」から路線は明確。完全に現代の「ジミー・スミス+ケニー・バレル」路線だ。もちろんそのあたりが大好きなわたしはこのアルバムを好む。4曲目、ジョビンの「ダブル・レインボウ」がトロピカルでワルター・ワンダレイのようなノリ。「マイ・アイデアル」は神妙にケニー・ドーハムの名演を意識したかのような演奏。ラストの「ブロック」(アレキサンダーのオリジナル)はファンク色の強い8ビートナンバー。全盛期のジミー・スミスを思わせる快演だ。1000円前後で買えるのも魅力。
NAXOS JAZZは最近、新譜が出てないのが残念。エリントンやパーカーなどの歴史的名盤の復刻を多数出しているようだ。
個人的主観による星の数(5つ星で満点、☆は0、5点)。
★★★☆
ベルリオーズ:幻想交響曲あれこれ
もちろんこの曲は義務教育で学ぶから、存在は知っていたが、好きになったのは比較的最近である。5年ほど前に、オークションで、あるCDを落札したが、出品者がサービスで一枚オマケしてつけてくれたのである。ヘルベルト・ケーゲル指揮、ドレスデン・フィルによる「幻想交響曲」。出品者がケーゲルのBOXSETを購入したら、ダブったので、オマケしてくれたのだ。どうせオマケということで、しばらく放置していたが、聴いてびっくり。何と面白い曲なのだろう。4楽章「断頭台への行進」のグロテスクなこと!首がギロチンで刎ねられ、ぽとっと落ちるところまで描写している。そして4楽章のあの鐘の音の不気味なこと。きょうはこの鐘の音を中心に、独断と偏見で名盤をご紹介する。
まず、いわゆる巨匠に、この曲の名演は少ない。まずカラヤンはただ仕事として、この曲を料理していて刺激がない。小澤征爾はまじめすぎ。バーンスタインは、はしゃぎすぎ(狂気という観点からすると面白いが)、アバドは勘違い、と言った按配である。
この曲の聴き所は4楽章の鐘の音を各指揮者が工夫をこらしているところ。4楽章の粗筋は首を刎ねられた主人公が地獄に落ち、そこで自分の葬儀が執り行われる、という何とも不気味なもの。そのときに鳴り響く弔鐘だから、わたしはより不気味なものを良しとする。せっかく、おぞましい感じで曲が進んできたのに、この鐘で、あ~聴く時間とCD代損したというものも少なくない。多くの指揮者は、鐘の代わりにチューブラーベルを使用しているが、それもステージ上に一台、そでに一台据えて演奏しているものもある。また微妙にピッチをずらし、「不気味感」を演出しているものもある。もっと面白いのはいろいろな鐘が使われていることだ。例えば・・・。(と同時に推薦を)。
アバド~シカゴ響:「広島の平和の鐘」をサンプリングし、用いている。実に美しい響きだが地獄で鳴り渡る鐘はこんなに美しくて良いのか。だから勘違いと上で書いたのだ。大体、この演奏は表面的で、シカゴ響の強烈な個性を完全に殺している。もう少しざっくりと血を見たかった。「断頭台への行進」の最初のテーマなど楽譜どおり繰り返しているところは面白いが。
評価★☆(広島の平和の鐘を世界に鳴り響かせたことに免じて)。
(ジャケット掲載の必要なし)。
ヤンソンス~コンセルトヘボウ:倍音がかなりあるが、明瞭な鐘。この演奏、ヤンソンスは一楽章から振幅が激しく、間を十分に取り、かなり不気味な演奏に仕上げている。「断頭台への行進」の冒頭のティンパニーなどは耳の前で叩かれているようなうるささ。そこが刺激的。コンセルトヘボウからよくこのようなダーティな音色を引き出したと拍手を送りたい。外盤屋で900円くらいで見かける。
評価★★★★
クーベリック~バイエルン放響:ライブ男クーベリックの面目躍如。鐘が凄い。非常に沈んだ音色の鐘に同じ音程の超低音のピアノを重ねている。非常に不健全な感じが最高に良い。オケ、指揮者とも全精力をつぎ込んだ「断頭台」も良いが、3楽章の遠雷で身の毛もよだつ感じがする。ヴァイリンの両翼配置も効果的。一番のおすすめ。
評価★★★★★
ケーゲル~ドレスデン・フィル:わたしとこの曲の出会いの一枚。鐘は非常に低いピッチのもの。丑三つ時に響き渡るようなお寺の鐘のような音。夜一人できくと失禁してしまいそうである。オケの精度がいまひとつなのは残念だが、ケーゲルの意表をつく指示についていくのがやっとという感じ。懸命さはかえる。「断頭台への行進」の冒頭のティンパニーもすさまじい。「力の限り、音楽性度外視で」とか指示されたのだろう。わたしも結局ケーゲルの魅力に取りつかれ、上述のBOXSETを購入。一枚余ったので友人にあげたら、その友人もケーゲルにはまる始末に。
評価:★★★★☆(オケが残念!)
最近の演奏でも推薦できるものは幾つもある。
ゲルギエフ~ウィーン・フィルは優雅なオケをよくぞここまで粗野にしたと拍手。2楽章のワルツは夢見るように美しく、後半とのコントラストが激しい。
ブルックナー全集やN響の客演ですっかり人気が定着したスクロヴァチェフスキ~ザールブリュッケン放響はかなりドイツ的なしっかりとした幻想。若干物足りないが曲に対する真摯な取り組みがうれしい。併録の「ロミオとジュリエット」の「愛の場面」が美酒の味わい。バジェットプライスだからこれだけでも買い。
エッシェンバッハ~パリ管は色彩感豊か。「断頭台」から原色をキャンバスにぬったくったような不気味さに変貌する。
PS:ケーゲルは「鐘」にかなりこだわっていたようで、ショスタコ5番のクライマックスでも鐘を鳴らす。言うまでもなく楽譜にそのような指示はない。演奏後の客の拍手もためらいがち。蛇足だがケーゲルはベルリンの壁の崩壊当日、自室でピストル自殺。旧東側ではカラヤン並みの人気があったそう。来日も多かっただけに生で聞いてみたい指揮者だった。
ミシェル・サダビー/ナイトキャップ/サウンドヒルズ
(1)トラヴェリン・オン
(2)ナイト・キャップ
(3)アイム・フリー・アゲイン
(4)マヤ
(5)ナイル・ヴォヤージ
(6)サテン・ドール
ミシェル・サダビー(p)
パーシー・ヒース(b)
コニー・ケイ(ds)
1970年10月、スタジオ録音
まずリーダーの名前について。先日の記事ではサダビィと表記したが、調べるとサダビー、サルダビーと様々。93年発売のサウンドヒルズ盤では上記サダビーと表記している。
オラシオさんからのTB、コメントをいただき無性に聴きたくなったが、これはやはり名盤だ。
まず、リーダーの締め付けがゆるいと、サイドメンがこんなに生き生きと自発的になることが分かる。サイドメンは当時MJQのメンバー。ジョン・ルイスの元を離れると、こんなに個性を発揮する。西部劇に使われるような楽想の「トラヴェリン・オン」はことのほかハードなコニー・ケイのドラムを堪能できる。
白眉はアルバムタイトル曲。自然発生的なブルースという感じだが、パーシー・ヒースのイントロが圧巻。粘着質のベースが、この曲全体のカラーを決める。サダビーもR&Bのようなフレーズを取り込み、いつもよりかなり粘っこいが、NYの黒人的なそれではないため、何度聞いてももたれない。
「アイム・フリー・アゲイン」は、メロドラマ寸前の甘い曲。執拗にメロディを繰り返すが、三者が少しずつ変化を加えているため単調にならない。サダビーのソロが始まった瞬間にケイがシンバルで装飾するあたりぞくっと来る。
全体として3人の個人技が光り、かつ意思相通がうまく行っている名盤と確信する。やはり、それは一度聴いたら忘れないオリジナル曲で発揮される。
センターにベースがどっかりと鎮座する録音も良い。
個人的主観による星の数(5つ星で満点、☆は0、5点)。
★★★★☆