クラウディオ・アバドという指揮者
クラウディオ・アバドはわたしにとってポジションの難しい指揮者です。
もちろん彼は世界有数の指揮者で、そのことに異議を唱えるわけではないのですが、
あくまでもわたしの中でのポジションです。
最近、彼はガンを患い、激ヤセしてしまい、以前の万年青年のような容姿は失われましたが、
やはりいつもクールな優等生のような印象があります。
少し前のニュース映像では、少し体重を戻し、かっこよくなっているようですが。
どうも音楽的姿勢にも、そのような優等生的態度が見え隠れし、わたしにとっては斜めから見てしまうと
いうか、まともに聞くことができないというか、そういう指揮者でした。
言い換えると、どうもそれはわたしはない良いものを彼が持っているので、「ねたみ」が原因だったのかもしれません。
それで偏見なしに彼の音楽を聴いてみると、彼の丁寧な、一音一音を磨き上げた音作りに気付きました。
愛聴盤BEST3を。
ベルリーズ:幻想交響曲(シカゴ響と)
以前に第5楽章の地獄での葬式に、ヒロシマの平和の鐘をサンプリングしていることを
「場違い」とけなしましたが、この澄んだ鐘の音を使うことで、逆に厳粛さが増し、一層残酷な
パロディーになっているように思います。全体としては徐々に音楽が盛り上がり、最後に大爆発する
名演でしょう。
マーラー:交響曲第5番(シカゴ響と)
この録音はオケの機能美と彼の繊細さ、イタリア人らしい情熱がかみ合った
白熱の演奏です。
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ウィーン・フィルと)
一音一音を慈しんで演奏しています。時に慎重すぎと思われるところもありますが、
ウィーン・フィルというリムジンを得て、どの部分を切り取っても唖然とするくらいの美音を
奏でます。「今」を感じさせる名演です。
他にもグルダのサポートに回ったモーツァルト23番のスリリングな演奏、
BPOとの伝説的ライブ、マーラー「巨人」など、お勧めです。