ザ・コンプリート・クール・ストラッティン・セッション | 「暫定復活」ジャズ&クラシック・レコメンド

ザ・コンプリート・クール・ストラッティン・セッション

 ジャズ評論家の巨匠、故油井正一氏が「ジャズのレコードは見つけたときに買うべし」という名言を残している。大衆音楽とは言えないジャズのレコード、CDは、ショップで自分の手から離れたら最期、入手できなくなるものが多い。ネットが発達した今でさえそうである。ちょっとのタイミングで買い逃したものに東芝EMIの国内盤「ザ・コンプリート・クール・ストラッティン・セッション」があった。まず、ジャケットを見ていただきたい。

コンプリート

 

 このジャケット、わたしのプロフィールのところと見比べていただくと分かるのだが、別テイクなのである。いつでも買えると思っていたら、いつの間にやら廃盤に。中古、オークション、共に目を光らせていたが、なかなか登場しない。登場してもオークションだとすぐに4000円~5000円以上の高値が付く。何と言ってもこのジャケットと思い指をくわえて眺めていた。するとつい先日、中古で1200円のものを発見。すぐに注文。無事、わたしのもとに届いた。この写真の別テイクが多数、載せられている。やはり、正規のジャケットと、この写真が優れている。80年代に輸入盤レコードで正規写真の反転ジャケットが出て、アメリカのソニー・クラークへの情の薄さを感じたことがある。わたしは断固買わなかったが、今になるとたまらなく欲しいものだ。当時、ディスク・ユニオンで1500円くらいで、やはりそういう扱いで売られていた。

 さて、このCD、ジャケット以外にも面白いところがある。モノラルのマスター・テープが使われていることだ。発売当時はまだステレオが普及しておらず、モノ盤とステレオ盤が同時に発売されていたそうだ。ブルー・ノートの場合、モノ盤で入っていた、ミュージシャンの声なんかが、ステレオ盤ではカットされたりしている。このCDで面白かったのは、一曲目「クール・ストラッティン」のステレオ盤では、2箇所ほど「ブチッ」と雑音が入るのだが、それがない。てっきり、微妙に編集ではさみを入れたものだと思っていたが、モノ盤を幾ら聴いてもそれがないことを考えると、編集ではなく、ステレオマスターのキズのようだ。また「ディープ・ナイト」では、少しテープが歪んでいるものの、ソニーのカウントの声が微かに聞こえる。テープのゆがみのゆえ、ステレオマスターでは上手に省かれたのかもしれない。

 まだ到着して、数日だが、新た発見があって面白い。宝物が一つ増えた気分だ。