GIANT STEPS/JOHN COLTRANE/ATLANTIC 81227 3610-2 | 「暫定復活」ジャズ&クラシック・レコメンド

GIANT STEPS/JOHN COLTRANE/ATLANTIC 81227 3610-2

  いやはやわたしがコルトレーンのアルバムについてあれこれ言うことになるとは思わなかった。ついこの間まで、嫌いなアーティストだったのだから。未だにブルーノートの「ブルートレイン」は許容できないが、それはまた後日・・・。

 このアルバムからはマスター・テイクはいかにして作られるか、また、サイドメンがいかに重要かを思い知らされる。

 このCDにはオリジナルのアルバムのテイクに8曲ものボーナス・トラックが追加されている。「ジャインアント・ステップス」の3テイクに注目したい。最初のテイクはレックス・ハンフリーズをドラマーに迎えて収録されている。彼の持ち味はブルーノートのドナルド・バードやデューク・ピアソンの諸作に見られる、ファンキーで、かつ「のほほん」とした味わいだ。「のほほん」の要因は、彼の4ビートの三拍目にアクセントをつけない、あるいは叩かない奏法にある。リーダーに遠慮しているかもしれないそのドラミングは聴いていて微笑ましい。

 「ジャインアント・ステップス」に彼のドラミングは不適合だったようである。複雑に変化するコード進行についていけず、彼はひたすらトレーンの顔色を伺っているようだ。結局、トレーンも不完全燃焼のまま、演奏は終わってしまった。生真面目でかつ爆走するタイプのトレーンはただ伴奏してくれる程度のドラマーでは物足りないのだ。自分を猛プッシュしてくれるタイムキーパーが必要なのだ。

 マスター・テイクを聴く。ドラマーはアート・テイラーだ。百戦錬磨のこのドラマーはコルトレーンのプレイに散々おかずを入れながら、正確無比なタイム・キープをして、トレーンをリードした。あたかもトレーンの先をひたすら行くかのように。トレーンは急に、何かに取り付かれたように、スイッチが入り、あのシーツ・オブ・サウンドが始まるのである。リーダーが快調になると他のメンバーも負けじと好演を繰り広げる。フラナガンのセンスのあるタッチにも注目したい。

 この3テイクだけでも買いのアルバムである。

 ★★★★☆